珍しく蒼くんが長く一緒に居ようとしてくれる。それが堪らなく嬉しい。
私の家の方向とは少し遠回りして大きな公園の中に入った。
公園内は小さなお子さんを連れたお母さんや犬の散歩をする人が目立つ。
「危ない!」
急に手を引っ張られると体が蒼くんの胸にぶつかる。私のすぐ横を小学生が乗った自転車がスピードを出して通り過ぎて行った。
「大丈夫か? ったく、危ない乗り方しやがって」
耳元で蒼くんの機嫌の悪い声が聞こえる。
「ぼーっとすんなよ」
そう言うと蒼くんは私から体を離したけれど手を繋いだまま歩き出した。まるで今までずっと繋いでいたかのように自然と。
「ありがと……」
「ん……」
お互いに手を繋いでいることに何も言わずに歩き続けた。
初めて蒼くんにちゃんと触れた。この手を蒼くんが振りほどかないことが嬉しくて仕方がない。
更に公園の奥へ歩くと広い花壇と噴水がライトアップされた広場に出る。
「きれい……」
思わず呟くと蒼くんは「だろ?」と言った。
「一回来てみたかったんだよね。ここ友達と来てもイマイチだろ?」
私と来たかったという意味にとってもいいだろうか。蒼くんに私は『友達以上』と証明してもらったんだ。
横に並んでいた蒼くんが体の向きを変えて私と向かい合った。
「卒業したら俺たちのこと秘密にしないでいいから」
真剣な表情でそう言われて目が潤んできた。卒業して高校の同級生と離れたら堂々と付き合えるんだと思うと涙を抑えるのに必死になってしまう。
「なんで泣きそうになってんの?」
「だって……」
不安だった。付き合ってるっていうのは私の勘違いじゃないかと思ってたから。
「嬉しい……」
「泣いたらせっかくのメイク崩れるよ? 可愛いのに」