6年ぶりに見た薫は想像以上に綺麗になっていた。
思い出すのはほとんど制服姿だったけれどドレスを着て髪をアップにした薫は主役の香菜にも負けないほど綺麗だなんて思ってしまう。
紗枝が不安なことを言っていたけれど、問題なく披露宴まで終わった。
俺は香菜に約束した通り二次会が終わるまで薫に近づかないつもりだった。薫の方から来てくれないかな、なんて都合よく願ったけれど、薫は目が合うとあからさまに顔を背けた。
俺は今でも薫に嫌われているのだと知って後悔に押しつぶされそうになる。
だから逃げるように帰ってしまう薫を追いかけた時には冷静に言葉を出せているか不安になった。
やり直したいと言ったらまた罰ゲームかと疑って周りを見回した薫は、最後に見た時と同じ顔をしていた。俺を全力で拒絶する。
もしかしたら薫もやり直そうって言ってくれるのではないかと勝手に想像した。俺を許してくれるんじゃないかって期待した。
諦めの悪い俺は言い訳すら薫に言えていない。
「もう追いかけてこないで」と逃げられても、後日翔から無理矢理聞き出した薫の会社に足を運んだ。
怒られることも覚悟していた。怖がられても謝って気持ちを伝えたかった。
会社から出てきた薫の横にいる男を見たときは嫉妬した。親しそうな様子のその男に薫は「付き合ってない!」と俺たちのことを否定したことにショックを受けた。薫の中で俺の存在は元カレじゃなくただの同級生にされていた。
何よりも薫が職場のその男に好意を持っていることに愕然とする。失った時間が悔やまれた。どうしようもない寂しさが湧き上がって増々俺は焦りだす。
「薫を傷つけたことはごめん。早く本当のことを言えなくてごめん。もう絶対薫に嘘をつかないって誓う」



