◇◇◇◇◇
部屋のドアに鍵を差し込み捻ると、何の引っ掛かりもなく軽く回ってしまったことに溜め息をつく。また紗枝が勝手に俺の部屋に入っている。
ドアを開けて部屋に入るとリビングの明かりがついている。
「おかえりー」
奥から紗枝が笑顔で俺を迎える。それが当たり前だという態度の紗枝に呆れて仕事の疲れが一気に蘇る。
「勝手に入るなよ。いい加減鍵返して」
低い声でそう言うと紗枝は「彼女なんだしいいでしょ」とテレビに目を向けて俺の怒った顔を見ないようにする。
「もう別れただろ。私物を持って出て行ってよ」
「私は納得してないから」
テレビを見ながらくつろぐ紗枝と入り口で立ったままの俺とではどちらが部屋の主か分からない。
「理由を言ってくれないのに突然別れようって言われても、私はそんな聞き分けのいい女じゃない」
バラエティー番組を眺めてわざとらしく笑う紗枝は、別れてほしいと伝えてから3ヶ月たってもまだ俺の部屋の合鍵を返してくれない。
「理由は……他に好きな人ができたからだって言っただろ」
「そんなの元々嘘だって分かってる。本当の理由もね」
そう言って紗枝はローテーブルに置かれた白い封筒を指で軽く弾いた。
封筒の中身は翔と香菜の結婚式の招待状だ。
「高橋くんと鈴木って結婚するんだね。まだ鈴木と付き合ってたなんて驚きー」
バカにしたような声音に少しだけムッとする。
紗枝は高校の頃から香菜と薫をあまり良く思っていなかったというのは付き合っていくうちにわかった。
当然翔は紗枝には招待状を送っていない。
「勝手に中を見るなよ」
「これって日野も来るんでしょ?」
薫の名前が紗枝の口から出ると俺は目を見開いた。
「だから私は蒼と別れないの」
部屋のドアに鍵を差し込み捻ると、何の引っ掛かりもなく軽く回ってしまったことに溜め息をつく。また紗枝が勝手に俺の部屋に入っている。
ドアを開けて部屋に入るとリビングの明かりがついている。
「おかえりー」
奥から紗枝が笑顔で俺を迎える。それが当たり前だという態度の紗枝に呆れて仕事の疲れが一気に蘇る。
「勝手に入るなよ。いい加減鍵返して」
低い声でそう言うと紗枝は「彼女なんだしいいでしょ」とテレビに目を向けて俺の怒った顔を見ないようにする。
「もう別れただろ。私物を持って出て行ってよ」
「私は納得してないから」
テレビを見ながらくつろぐ紗枝と入り口で立ったままの俺とではどちらが部屋の主か分からない。
「理由を言ってくれないのに突然別れようって言われても、私はそんな聞き分けのいい女じゃない」
バラエティー番組を眺めてわざとらしく笑う紗枝は、別れてほしいと伝えてから3ヶ月たってもまだ俺の部屋の合鍵を返してくれない。
「理由は……他に好きな人ができたからだって言っただろ」
「そんなの元々嘘だって分かってる。本当の理由もね」
そう言って紗枝はローテーブルに置かれた白い封筒を指で軽く弾いた。
封筒の中身は翔と香菜の結婚式の招待状だ。
「高橋くんと鈴木って結婚するんだね。まだ鈴木と付き合ってたなんて驚きー」
バカにしたような声音に少しだけムッとする。
紗枝は高校の頃から香菜と薫をあまり良く思っていなかったというのは付き合っていくうちにわかった。
当然翔は紗枝には招待状を送っていない。
「勝手に中を見るなよ」
「これって日野も来るんでしょ?」
薫の名前が紗枝の口から出ると俺は目を見開いた。
「だから私は蒼と別れないの」