「いいの?」

「薫と二人だと夏城くんは緊張しちゃうから乗り気じゃないかもしれないでしょ。だったら友達の翔もいれば来てくれるかも」

「香菜ありがとう!」

「どういたしまして」

香菜と高橋くんに説得されたのか夏城くんから映画に行こうとLINEが来た。私が誘っても曖昧な態度だったのにと不満に思いながらも学校じゃないところで夏城くんと会えるのは嬉しかった。

数日間でメイクの練習をして新しく服も買った。せっかくだから学校とは違う私を見てほしかった。










二人きりだと弾まない会話も香菜と高橋くんを交えると驚くほど盛り上がる。映画のクオリティの高さが更に後押しした。

「面白かったね」

「うん。アクションシーンも動きがすごかった」

香菜と高橋くんの後ろを夏城くんと並んで歩きながら、私は映画の感想を熱を込めて語った。

「もうセリフにグッときた!」

「ほんと好きなんだね」

「あ……私だけ盛り上がっちゃってごめんね……」

「そんなことないよ。俺も映画興奮した」

「またどこか行かない? 今度も四人でもいいし」

「そうだね。考えとくよ……」

二回目の『考えとく』は行く気がない意思表示だ。

前を歩く香菜と高橋くんは付き合っていないのに仲良く話している。それなのに付き合っているはずの私たちは何も会話がなくなってしまった。

告白は夢だったのだろうか。香菜の言う通り本当に何かのゲームで私に嘘をついたのではないか。
でもそのことを夏城くんに聞く勇気は私にはない。