淡々と発した言葉に蒼くんはわざとらしく傷ついた顔をする。そんな顔をされても、蒼くんに傷つけられたのは私なのだ。どうしてこちらが加害者のような態度をされなければいけないのか。

「薫……ごめん……」

「今更都合がよすぎ。私はずっと立ち直れない」

「だからこそやり直したい!」

蒼くんは家の中の家族にまで聞こえそうなほど大きな声を出した。

「何年もたってこんなこと言うのは酷だってわかってる。でも俺は真剣に薫が好きだ。今も昔も」

「あの時ふざけんなって怒鳴ったくせに!」

今度は私が声を張り上げた。

「薫を傷つけたことはごめん。早く本当のことを言えなくてごめん。もう絶対薫に嘘をつかないって誓う」

「っ……」

この人はいつまで私を縛りつけるのだろう。
蒼くんを傷つけてやりたい。私が傷ついたのと同じくらい。

ここまでやり直したいと言うのなら、私のことを本気にさせて同じように振ってやる。

「分かった……やり直す……」

小さく呟くと蒼くんは「ほんとに!?」と顔を輝かせた。

「絶対にもう嘘はつかないって誓ってくれる?」

「うん。誓うよ!」

蒼くんが照れながらそう言った。

「今まで離れてた時間の分を埋めたいと思ってる。絶対薫を傷つけない」

そう言って一歩私に近づいてきたから思わず離れてしまった。

「ごめん! 焦らないから……ゆっくりやっていこう」

必死に私の顔色を窺うから「本当に本気なの?」と尋ねると「何度も言うよ。薫のこと本気で好き」と真剣な表情で私を見返す。

6年前には素直に言ってくれなかった言葉を簡単に吐く蒼くんを信じることは、ひねくれてしまった私には難しい。

絶対に気を許さない。もっと私を好きにならせてボロボロに捨ててやる。