「まだ時間があるからだいじょーぶ! 彼氏くんと会うんでしょ?」
「彼氏じゃないですって。何で会うって分かるんですか?」
「日野が落ち着かないのは彼氏くんのことを考えてる時だから」
冬木さんにはバレているのが恥ずかしい。
「彼氏くんも今必至だよ。早く会いに行ってあげな」
「必死かなんて分かりませんよ」
「いや、必死だったよ。俺に怒鳴るくらいには」
「怒鳴った? いつです?」
蒼くんと冬木さんが会った時にそんなことはなかったのに。
「あー……この間会ったんだよね」
「え? 私と一緒のとき以外で?」
「そう。二人でご飯行ったんだ」
いつの間にそうなったのだ。私の知らないところで元カレと職場の先輩がご飯に行っているなんて複雑だ。
「二人で変な話してないですよね?」
「変な話って?」
「私の愚痴とか……」
冬木さんはふっと笑った。
「時間は大丈夫?」
「え……」
「待ち合わせ時間は?」
「ああ、えっと……そろそろ出ないといけないんですけど……」
「じゃあ行きな。彼氏くん待ってるよ」
「待っててくれるのかな……」
話し合おうとは言った。その展開次第ではもっと嫌われるかもしれない。
「また修羅場をするのは疲れるので……」
「じゃあ彼氏くんと完全に別れたら俺と付き合う?」
「へ?」
思わず変な声が出る。冬木さんが驚くようなことを言うから。
「俺と、日野で、付き合う?」
冗談を言っているようには見えない顔で私を真っ直ぐ見る。
人の少ないオフィスで、私にしか聞こえない声で冬木さんは告白みたいなことを言う。
「あの……元カノさんは?」
「俺、元カノを諦めることにした。いつまでも好きでいたって俺が辛いだけだから」



