・ ・ ・ 「へえ、和葉ちゃんはモテモテさんなんだ」 穏やかに言ったナベケンのとなりで、百合は何杯目か不明のカクテルグラスを揺らした。 「そんな子なら告白され放題、彼氏も引っきりなしだったんじゃないの?」 「それが、そうでもなかったんですよ」 満の発言に興味を覚えたのか、百合は「ほう?」とつぶやきカウンター上で指を組む。となりのナベケンも同じようなポーズを取ったので、満は苦笑してから、当時を振り返り始めた。 思い出すのは、懐かしき母校の大きなグラウンドだ。