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洋子が車を運転し連れてきてくれたのは、近所の大きな公園だった。森林公園とも言われるそこは、遊具メインというよりは広場や散歩コースが名物だ。
年末で寒い時期のせいか、人があまりいない。閑散とした大きな公園が、静かに二人を出迎えた。
「ゆっくり散歩でもしよう」
大きな荷物をかついだまま、洋子はカメラを弄っている。
「まさか撮影するつもり?」
「当たり前だ。息子の成長を収めないカメラマンはいるか? いないだろう」
「はいはい」
一を投げれば十で返す母親に、満はいつも敵わない。
何とはなしに公園の奥へ足を向けて、枯れ葉まみれの道を歩いた。ふと、洋子がつぶやく。
「ここは自然が多くていいな。今度の展示会の作品も、ここで撮ればよかったな」
「展示会するの?」
「ああ、仲間と話が盛り上がってな。今回の帰国はそれもあったんだ。近所でするから、お前も観に来い」
「もちろん」
会話はそこで終わり、また枯れ葉が踏まれる音だけが響く。
しばらくすると、木々が並ぶ木立地帯になり、よりふかふかな落ち葉が絨毯のように敷き詰めらる道に変わった。
満の背後から、シャッター音が鳴り始める。洋子が撮影を始めたのだ。
「やめてよ」
苦笑する満。幼い頃から、洋子の被写体になることは多かった。
