御手洗くんと恋のおはなし

「あんまりアタックされすぎて、嫌われたんじゃないですか?」
「いや、でも、今までどおりだったし思い当たる節がなんてないしさ」
「でも生徒と教師でしょう? それがネックじゃあ……」
「そんなの、今さらだと思わないか!?」

 ただ漏らした満の考えに、坂本は思いのほか反発する。
 バンッと両手を机につけ、身を乗り出してきた。

「それなら、とうの昔にはっきり断れば良かったんだ! 俺、一年の頃からずっと好きだって伝えてて……っていうか、もうすぐ卒業だから、生徒とか気にしなくても良くなるのに……納得いかないっていうかさぁ!」
「はぁ」
「他に好きな人ができたのか、て聞いても、そうじゃないって言うし。そんなに……」

 そこで坂本はやや声を小さくして。

「そんなに俺のこと、嫌いだったのかな……」

 と、しょんぼりと顔をうつむけた。
 落差の激しい彼の感情に、満はただ感嘆するしかない。坂本といい大谷といい、スポーツバカってのは恋愛にも熱くなりやすいのだろうか、なんて考える。

「まぁ、真偽がわからなくてもバレて責任を負うのは結局、神楽先生なわけですし。未成年淫行、てやつでしたっけ」
「……わかってるよ」

 保健室で、かたくなに坂本との仲を否定した涼子を満は思い出す。
 たしかにしっかり者の涼子が、香水の香りを移すほどに坂本を近づけさせるということは、他の生徒より少なからず好意的なものはあるのかもしれない。
 けれど世間の目が厳しい今、真実はどうあれ、バレれば叩かれるのは間違いなく大人の教師である涼子だ。
 だから坂本を遠ざけることは、当たり前のことのはずだが──。