◇ ◇ ◇
帰宅した満は、自室にこもり夕食までの時間を勉強にあてていた。
ノートと教科書を開きペンを走らせていたところで、コンコンと控えめなノックが聞こえる。
「はい」
「みーちゃん、ちょっとごめんね」
ウェイトレス姿の和葉が入ってきた。たまにコーヒーの差し入れが階下からあるのでそれかとも思ったが、和葉は何も持ってはいなかった。
おずおずと顔だけのぞかせて、遠慮がちにつぶやく。
「下りてきてもらっていい?」
「いいよ。お客さん増えてきた?」
お店への加勢要望かなと、背中をひねらせた満に。
「ううん、坂本先輩が来て、みーちゃんと話をしたいって」
と、和葉は困惑したように言った。
「……わかった、すぐ行く」
満は和葉と一緒に階下のお店に向かった。
隅のテーブル席に、制服のままの坂本が座っていた。席には、注文したのだろうコーヒーが置かれている。
「ごめんね。急に呼び立てて」
「いえ、大丈夫ですよ」
満は恋敵となる男の前に座り、テーブルを挟んで向かい合った。
この男の目的は──さぁ、何か。
