大好きな梨花。中学からずっと好きで、今では大切な彼女だ。
大人しくてちょっと気弱で、スタイルもいいから電車通学の高校からよく痴漢被害に遭っていた。
最初はそんな彼女を守ろうと、慎一だって同じ電車に乗ったりして被害防止に努めていた。
しかし、毎日行き帰りをぴったりと合わすことなんてできない。そしてそんな時に限って、彼女は被害に遭うのだ。
それが慎一には悔しくて、腹立たしくて。
痴漢に反撃もできない梨花に苛立って、つい「隙があるんじゃないの」なんてもらしてしまった。
でも、梨花を責めることは愚直なことだったのだ。
女の子にとっての痴漢というのは、さっきの慎一にとってのヤクザのような、身もすくむ存在なのだろう。
ヤクザに絡まれたと思っていた慎一。あれだって、一人ポツンとスマホゲームなんてしていたせいだろ、対策しなかったのかよ、助けくらい呼べただろう、と言われたのなら──どんな気持ちだったろうか。
梨花はきっといつも、そんなまわりからの反応にも傷ついていた。
二次被害なるものを自分も与えていたのだと、慎一はようやく気づく。
「梨花……ごめん。俺、お前のこと全然理解出来てなかったんだな」
「う、ううん! そんなことないよ、慎一くん、いつも守ってくれたし……心配もしてくれたし」
梨花はギュウ、と慎一の手を両手で握った。
「ごめんね、怖かったよね」
「梨花……」
自分のせいではないのにそう言う梨花の優しさに、慎一はハッとする。
そうだ、自分もこんな風に声をかけてあげれば良かったんだ。
怖かった気持ちに寄り添って、ここに味方がいるよ──と、言ってあげれば。
とたんに慎一は気恥ずかしくなり、申し訳なく思って、目の前の大好きな彼女の小さな両手をそっと握り返した。
「……ありがとう梨花、これからも俺といてくれる?」
「うん! 私ももう痴漢に負けないように、頑張るね!」
気弱だったはずの梨花がちょっとだけ強くなった気がして、慎一は笑う。
さわさわと、恋仲を深めるような爽やかな秋風がただ、二人を包みこんでいた。
大人しくてちょっと気弱で、スタイルもいいから電車通学の高校からよく痴漢被害に遭っていた。
最初はそんな彼女を守ろうと、慎一だって同じ電車に乗ったりして被害防止に努めていた。
しかし、毎日行き帰りをぴったりと合わすことなんてできない。そしてそんな時に限って、彼女は被害に遭うのだ。
それが慎一には悔しくて、腹立たしくて。
痴漢に反撃もできない梨花に苛立って、つい「隙があるんじゃないの」なんてもらしてしまった。
でも、梨花を責めることは愚直なことだったのだ。
女の子にとっての痴漢というのは、さっきの慎一にとってのヤクザのような、身もすくむ存在なのだろう。
ヤクザに絡まれたと思っていた慎一。あれだって、一人ポツンとスマホゲームなんてしていたせいだろ、対策しなかったのかよ、助けくらい呼べただろう、と言われたのなら──どんな気持ちだったろうか。
梨花はきっといつも、そんなまわりからの反応にも傷ついていた。
二次被害なるものを自分も与えていたのだと、慎一はようやく気づく。
「梨花……ごめん。俺、お前のこと全然理解出来てなかったんだな」
「う、ううん! そんなことないよ、慎一くん、いつも守ってくれたし……心配もしてくれたし」
梨花はギュウ、と慎一の手を両手で握った。
「ごめんね、怖かったよね」
「梨花……」
自分のせいではないのにそう言う梨花の優しさに、慎一はハッとする。
そうだ、自分もこんな風に声をかけてあげれば良かったんだ。
怖かった気持ちに寄り添って、ここに味方がいるよ──と、言ってあげれば。
とたんに慎一は気恥ずかしくなり、申し訳なく思って、目の前の大好きな彼女の小さな両手をそっと握り返した。
「……ありがとう梨花、これからも俺といてくれる?」
「うん! 私ももう痴漢に負けないように、頑張るね!」
気弱だったはずの梨花がちょっとだけ強くなった気がして、慎一は笑う。
さわさわと、恋仲を深めるような爽やかな秋風がただ、二人を包みこんでいた。
