満が目を覚ましたのは、それから一時間後のことだった。
勉強机に置かれた薬を見て、洋子が持ってきてくれたのだろうと考える。
「よく寝たなぁ」
スッキリしているので、おそらく熱も下がっているのだろう。
それにとても良い夢を見たので、そのせいもあるのかもしれないと考えた。
時計を見れば、もうお店が開いている時間だった。きっとバイトの和葉もすでに来ていて、階下でまたテキパキと働いているのだろう。
昨夜は、百合とナベケンにらしくなく自分の恋話をしたせいか、眠る前に和葉のことばかりを考えてしまった。
そのなかで告白の練習みたいなことをして、まったく自分のこととはいえいじらしい……と満は嘆息する。しかも。
(和葉にキスされる夢なんて……都合が良すぎるよな)
静かに扉を開ける。
一階に続く階段向こうの喫茶店から、和葉の「ありがとうございました!」という元気な声が聞こえたので、満は微笑み、仏の顔を浮かべた。
