御手洗くんと恋のおはなし

「おはようございまーす!」

 今日も元気よく喫茶店サルビアにやってきた和葉は、マフラーと帽子から雪を払った。
 そんな彼女を光一が出迎える。

「あらあら、けっこう降ってる?」
「いえ、ちょっとマシになりました。昨日の夜はすごかったですよね」
「ごめんね。休みにしても良かったんだけど、土曜日だから一人でやるの、ちょっと心配で」
「大丈夫ですよ! でも一人って、みーちゃんはどこか出かけてるんですか?」

 忙しいときや人手が足りないときは、いつも満がヘルプに来てくれる。しかし光一は「それがねぇ」と苦笑した。

「満ったら、熱出しちゃって」
「あらら」
「お客さんには『風邪ひきませんように』なんて言って自分がひいてるんだから、世話ないわぁ」

 笑う光一の背後から、ひょっこりと顔を出したのは洋子だった。

「お、和葉ちゃんこんにちは」
「こんにちは。洋子さん、先日は写真展のチケット、ありがとうございました! しかもモデル料までいただいちゃって……」
「いいんだよ。それよりもどうだい、楽しんでくれたかい?」
「もちろんです! すごくいい思い出になりました」

 和葉につられて洋子も笑い、手に持っていたトレイを差し出した。

「ちょうど良かった。これ、和葉ちゃんに任せちゃお」

 そのトレイには薬箱と、水入りコップが乗せられている。

「あ、みーちゃんにですか?」
「正解。頼んでもいい?」
「わかりました!」