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「好きなら告白しちゃえばいいのに」
あっけらかんと和葉にそう言ってしまったのは、あまりにもじれったいトライアングルに終止符を打てばいいのでは、と安易に考えてしまったからだ。
今よりも幼かった満は、今よりも単純に女の子の恋の応援をしていた。
「え、ええ! むむむ、無理だよそんなの!」
帰りが偶然一緒になった和葉は、満からの思いがけない提案に顔を赤らめた。
「でもこのままでいいの? 中嶋、今はフリーなんだよ?」
「うう……」
どうして和葉はこんなに自信がないのだろう、と満は思う。
たとえ中嶋に好きな子がいたとしても、こんなに可愛い和葉からの告白なら、傾くこともあるんじゃないのかな、なんて考えていた。
男子にとって女子からの告白なんて、大いに浮かれてしまう一大事件だ。ましてやそれが可愛い子からならなおさら。
中嶋の片想いの相手、戸田さんも可愛い容姿ではあったが、和葉の方がうんと可愛いと満は思う。
「……中嶋くんは、そう簡単に揺らがないと思う」
唇を尖らせてつぶやく和葉。
和葉と中嶋と戸田さんは、同じ小学校出身だ。だからきっと、満の知らない二人の関係を、和葉は知っているのかもしれなかった。
「……そっか」
どこかつまらなさを感じ、満は道の小石を蹴った。
