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オレンジ染まる、夕暮れの街中。
安藤慎一は、駅前のロータリーで彼女と待ち合わせをしていた。
タクシー乗り場から少し離れた駅の外壁に、背を預けてスマホゲームで暇つぶしをしている。
彼女の梨花とは、中学の卒業式で慎一から告白し付き合いをスタートさせた。
まさかオッケーをもらえるとは思わなかった慎一は幸せだった。高校は違えど、楽しい男女交際が始まり、その幸せは二年生となった現在も続いている。
傍目には順風満帆なお付き合い──だが。
(最近の梨花、元気ないよなぁ)
小さな悩みがまた、慎一の頭をもたげた。
もともと大人しい性格の彼女ではあったが、最近、グッと笑顔が少なくなった気がする。
やはり学校が違うと、心も少しずつ離れてしまうのだろうか……と、少し落ち込んだとき。 ピロリンと慎一のスマホが鳴った。
それは梨花からのメッセージで「ちょっと遅れるね」とのことだった。
いつも早いのに珍しいな、と思いつつも「わかった」と返信をしようとしたとき。
「おい、ニーチャン」
ドスの効いた男の声が聞こえ、慎一に影が落ちた。
見上げればそこには、たちが悪そうな大男が一人、立ちふさがるようにいた。
