『トラブル発生で終電も間に合わない事態です。何時になるかわからないので、今夜はうかがえません。すみません。』

悔しさと虚しさと・・・いろいろな感情があふれ出して本当は泣きそうだ。

悟の顔を思い浮かべながらなんとか頑張っていたのに、今日を逃したらまた1週間会えなくなってしまう・・・。

「薄井さん、新システムの設計図ありますか?」
「・・・え?」
「設計図見せてください。」
プログラマーの声がうまく聞き取れず、綾乃はもう一度話を聞き返す。
いつも以上に神経をつかう。

右耳の耳鳴りがひどく、話し声にもエコーがかかっているように聞こえる。
車の中は声以外のノイズが多くて、その中から声を拾い聞き取ることは余計に困難だった。
増して技術者もプログラマーも男性だ。

低い声は余計に聞き取りにくかった。