運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

片耳が聞こえないということは、いろいろと不便だった。
耳鳴りが続いている綾乃は午後になると吐き気を覚えた。
歩いていても片耳が聞こえていないだけで平衡感覚がおかしくなり、いつも以上に気を張らないとならない。

それでも頑張れるのは・・・

朝、綾乃は悟のダウンジャケットを着て出勤した。
外回りの予定は、仕事に遅刻することが決まってから延期にさせてもらい、一日中社内でのデスクワークだと決まっていた。

辛い、しんどいと思うとき、綾乃は自分のデスクの横にかけてあるダウンジャケットを見た。

がんばれる。

帰る場所がある。

悟の柔らかい微笑みを思い出しながら、何とか心折れずに仕事を最後までできた。