休憩中も化粧室へ向かい、咳払いをしてから聞こえているか自分の状態をチェックした。
意識をしていればちゃんと音は聞こえている。でも、一日を通して耳鳴りがひどい。
水の中に入っているようにおともぼやけて聞こえる。

さすがにごまかせない異変に綾乃は動揺した。
それでも、仕事は待ってくれない。

いつも以上に気を張りながら体力を使って仕事をしていく。
電話の声が聞き取りにくくて、先方に繰り返し要件を伝えてもらう時、今後ずっとこの状態が続いたら仕事に不利な状況になってしまうことを考え、不安にも襲われた。

ひと時の出来事であればいい。
明日には治っているといい。

そう願いながら終電時間ギリギリまで仕事をしてから帰宅して、いつもよりも早く布団に入り体を休めた。

不安が大きすぎて、余計に食べ物がのどを通って行かない。