運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

これが大人になったということなのだろうか。

歳を重ねて、自分をいたわることや健康のことを考えるようになった。
自分のメンテナンスにかけるお金もできて、いろいろと自由も手に入れた。
お化粧の仕方も覚えたし、疲れた時の体の休め方も覚えた。
愛想笑いも社交辞令も常識も身に着けた。あの頃よりは。
辛いことがあっても、ごまかしてつらくないふりをすることを覚えた。
どうしても立ち向かえないことからはうまく逃げる方法だって覚えた。

だってもう28歳だから。

そう心に言い聞かせているけれど、でも中身は・・

本当は誰かに甘えたい。つらいことがあったら泣きたい。
苦しい時は苦しいって大声で叫びたい。
逃げ出したって心には何かが引っ掛かり、とげが刺さったまま。

ただ・・・外見をごまかしたり、自分の気持ちをごまかしたり見て見ぬふりをしているだけで、簡単に思いだしてしまう。
簡単に気が付いてしまう。