運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

「マンションも引き払って、家を建てて、レストランと一体型にしたいと思ってる。レストランの面積は広げても、客席は俺が厨房で一人でまかなえるくらいしか置かない。店の一角には子供が遊ぶスペースを作ったり、外には庭を作って遊べるようなスペースも作ろうと思ってる。」
図面には大きな家の絵が描かれていた。そこには悟と綾乃と息子が描かれている。

「どう思う?俺の新しい夢。」
「すごくいいと思う。」
綾乃は笑顔で悟を見た。
悟も今まで以上にいい顔をしている。

「こんなに幸せな夢を持てるなんて、綾乃に出会う前の俺は想像もしてなかったな。」
「私も」
「変わることが悪いことみたいに思ってたんだ。親父の想いに亡くなるまで気づかなかったことで、そこまでしてイタリアンの料理人になったんだから、変わったらいけないって。どこかで意固地になってるところもあったと思う。でもそうじゃないよな。親父が望んでたのはそんなことじゃない。」
悟は息子を自分の胸の中にギュッと抱きしめる。
「こんな感情、知らなかった。この子の為ならなんだってできる。親父の気持ちが今ならわかるんだ。この子が教えてくれた。」