運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

「奏介の店ってなんかいいんだよ。俺の所の数倍は広いけどさ、紗那さんの仕事するスペースがあったり、家族のものが飾ってあったり、すごくアットホームな店なんだ。」
「今度見に来てくださいね。」
すかさず厨房から奏介が顔を出す。

「俺のレストランに唯一足りないものは、それだって気づいたんだ。だから俺どこか寂しいんだって。」
「?」
「俺が目指してるのは、おしゃれな服着て、食べにくるようなレストランじゃない。家族が笑いあって、あったかい雰囲気のある店にしたいんだ。ふと立ち寄れるような、そんな店。」
綾乃もレストランを手伝った時に感じた。
悟のお客さんへの話しかけ方や、苦手な食材を減らして作ったり、塩分や油分を控えめに作ったり、いつだって悟はお客さんとまるで家族のように接している。客席から見えない厨房で、オーダーされた料理をただ無心で作る環境が嫌で、この店を作った悟の目指しているものはちゃんと感じ取ってきた。
「ここには綾乃も、この子もいない。だから、もっと変わりたいと思ったんだ。変えたいと思ったんだ。」
綾乃は紗那が目の前に出した図面を見た。