綾乃はこの場所に来るたびに思いだしていた。

悟が涙を流しながら、別れを告げようとしたあの日のことを。

あの涙に、心溶かされて、あの涙に、すべてを流されたような気がした。
孤独も・・・不安も・・・悲しみも・・・恐怖も・・・


どれだけ悟が自分を想ってくれているか、心にまっすぐ届いた気持ちを、綾乃はしっかりと受け止めた。

悟が居なければずっと孤独を感じたまま、誰かのぬくもりや、愛に背を向けてがむしゃらに生きていた。

立ち止まることができるようになった綾乃には景色が全く違って見える。

毎日が輝いている。