運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

両親の墓地の前で綾乃は悟の背中から降りた。
墓石の前にしゃがみ、じっと見上げる。

その顔に表情はなくても、綾乃が両親に心で話しかけていることが伝わり、悟は何かあればすぐに手が届くくらいの距離をとった。

今は綾乃を邪魔したくない。

本当ならばこの場所に、綾乃のつわりが落ち着いたら幸せな報告をしに来るはずだった。
これから始まる幸せな毎日に、胸を張り綾乃の両親に報告をしたはずだ。

なのに・・・こんな姿の綾乃を・・・
こんなにつらい報告を・・・しに来るなんて想像もしていなかった。

しばらく綾乃はしゃがみこんだまま、両親に何かを話しかけているようだった。