運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

「薄井さん、目覚められていますよ?お会いになりますか?」
医師の言葉に悟は緊張しながら首を縦に振った。

処置室から病室に移されていた綾乃。
悟が病室の扉を開けてもただ窓の外を見つめている。

「綾乃?」
声をかけた後の反応が怖い。
乾いた声で綾乃の名前を呼ぶと、綾乃は窓の外を見たまま「ん?」と小さく返事をした。

悟はかける言葉が見つからないまま、綾乃の体をそっと抱き寄せる。

つめたく冷えた体に、悟は驚き自分のぬくもりを分けようと、強く抱きしめた。

「いなくなっちゃった・・・赤ちゃん・・・本当にいなくなっちゃったね。」
乾いた声なのは綾乃も同じだ。