運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

すぐに綾乃が抱えていた荷物をとりあげて床に置く。
「綾乃」
まだ表情のない綾乃。

「今日中には荷物をまとめて出ていくね。」
淡々と言う綾乃の言葉に衝撃を受けながら、悟は綾乃の精神状態がかなり悪いことを察する。
「どうして?」
本当は怒りたいくらいの気持ちを押し殺して悟は綾乃に語りかける。
なるべく冷静にと自分に言い聞かせながら。

「だって、一緒にいる理由もうないから。」
「理由って?」
「だって赤ちゃんがもういないのに、一緒にいる意味ないでしょ。」
悟は綾乃の両肩に手を置き、うなだれる。

もちろん子供ができたことで結婚を決めたような状況だ。
ゆっくりと関係を深めていく中で結婚を選択したような今までの経過ではなかった。
綾乃がそう思っても仕方ないと心の中では分かっている。