運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

「綾乃。」
悟に名前を呼ばれて悟の方を見る。

「今はまだ、妊娠したことが分かって、動揺したままだし、冷静に考えるなんて無理だよ。誰にも一気にあれもこれも考えられる状況じゃない。」
「・・・」
「俺は今綾乃の体が最優先だ。俺はこの子を産んでほしいし、綾乃の耳のことも全部心配だから、休んでほしいとも思う。」
「・・・」
「でも、それを決めるのは俺じゃないし、今じゃない。俺は綾乃が今までどれだけのおもいで仕事をしてきたかわからない。想像でしかない。実際にその時隣に居たわけじゃないから、わかってやれない。」
一人で生きていくと決めた時から、何もかも仕事にかけてきた。
頼ってきた。
自分の唯一の居場所にしてきた。

その場所を失うかもしれない賭けはあまりに大きい。

「俺は綾乃が仕事にどれだけの思いを注いできたかを想像だけでも俺は心が締め付けられるよ。本人はもっとだろ。比べものにならない。だから、俺は仕事をあきらめてほしいとは言わないし、今日は体の負担があまりに大きすぎて危ないと思ったから止めたけど、ずっとって意味じゃない。」