運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

綾乃の両手を包み込むように、悟は手をつなぎ、綾乃を見る。
「俺の幸せは綾乃が持ってる。」
「持ってないかもしれない。そんなのわからないじゃない・・・」
まだお互いをよく知っていない。一緒の時間だって短い。

「時間の長さじゃなくて、濃さだって俺は思うよ?」
優しく問いかけるような悟。
自分たちが過ごしてきた時間を思い出してほしいと訴えるような優しい響きの声。

確かに、長い長い時間一緒にいてもわかりあえていなかった哲史との時間。

お互いが見えないものも多かった。

でも、悟の気持ちも、想いも綾乃は心に自然と響くようにわかる。

わかってしまう。

今悟がどれだけ自分を思いやってくれているかもわかる。
今、悟がどれだけ自分を支えようと考えてくれているかわかる。

なのに、その胸に素直に飛び込めない自分への憤りで綾乃はどうにかなりそうだった。