運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

「全部」
結局綾乃が口にしたのは、絞り切れなかった言葉の行く末だった。

「・・・全部か。」
返事に一瞬、言葉に詰まる悟。

でも。

「全部不安か。そうだよな。」
綾乃の言葉を必ず受け止めてくれる悟。
まとまらずに投げかけた言葉でも、悟は共感して真剣な表情で頷いてくれる。

その姿から建て前でもただの同情でもなく、本当に悟が綾乃のことを考えてくれていることが分かる。

「俺は綾乃の不安事全部ほしい。」
「・・・」
「全部が不安で怖がってる綾乃も。まるごとほしい。綾乃の今も、未来も欲しい。この子も。俺たち三人の未来も。全部。」
「・・・」
「だから、言葉にならなくてもいい。綾乃が心で、感覚で、安心して委ねてくれるように、俺は頑張りたい。」