少しずつ季節も春に近づき、朝陽がまぶしいくらいに部屋に入る。
「本当はデートでもしたいくらいなんだけどな。」
「うん・・・」
悟は週末はレストランがある。綾乃も、週末も出勤することも多く、平日には到底休みがとれない。

2人にとってデートに出かけることは夢のまた夢だった。

だからこそ、いつもよりも長い時間一緒に居られる日は片時も離れがたい。

悟は少しでもデート気分を味わいたいと、自分の部屋にスクリーンとプロジェクターを買った。少しでも時間がとれる日は綾乃と二人、おいしい料理を食べながら映画を観る。

「冷めちゃうから、食べるか」
軽くキスをしてから二人は朝食の準備を再び始めた。

他愛もない会話をしながら食事を済ませると、綾乃が悟の寝ぐせを直す。
直し終えると、悟は市場へ向かうために部屋を出る。