運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

「泣きながら俺のスープを完食してくれた綾乃は、最後には少しだけ微笑んでた。ふって、力の抜けるような微笑みを見せてくれたんだ。」

ずっと泣くことはいけないことだと我慢していた。
誰かの前で泣くことももちろん。
それだけじゃない。

一人でいる時にも、涙を流してしまったら止まらなくなるような気がしていた。

余計に悲しみを膨らませるだけではないかと不安だった。

でも、すべてを食べ終えた時、自然と涙が止まっていた。
残ったのは温かなスープのぬくもりだけ。

綾乃はそれまで我慢していた想いがふっと軽くなるように感じた。
涙を流したことで、軽くなれたような気がした。

そして、悲しみの渦から抜け出せなくなるかと思っていた涙のあと、予想と違い再び頑張る力が湧き上がってきたのだ。