「誰だって怖い。前に進むことも、新しく切り開くことも。俺は、父親が日本料理をしてて、料理人としては父親と同じ道を選んだけど、やっぱりイタリアン料理と日本料理は世界が違うんだ。一度は料理人として進む道を選んだ時に、親父は喜んだと思う。自分のあとを継いでくれるって。」
「・・・」
「でも、俺が選んだのはイタリアン料理のシェフで板前じゃない。俺は親父が亡くなってから、親父が本当は自分のあとをついでほしいって思ってたことを知ったんだ。」
「・・・」
「俺が前に進もうと思うのは、親父の想いに気づけなかった自分と、あとから知った親父の想いに少しでもこたえたいって思うからだ。」
綾乃はぐるぐる巻きの毛布の中から両手を出して悟の大きな背中に手をまわした。
そんな綾乃をちらりと見た悟はどこまでも優しい顔をして微笑む。
「でも、親父は死んでんだよなー。」
「え?」
「俺は親父への申し訳なさもあってただただ自分に満足できず、ゴールも見えないままがむしゃらに前に進んでた。自分の幸せよりも、親父への後悔から料理人として成長することしか考えられなかったんだ。」
悟はもう一度綾乃を抱きしめなおす。
「・・・」
「でも、俺が選んだのはイタリアン料理のシェフで板前じゃない。俺は親父が亡くなってから、親父が本当は自分のあとをついでほしいって思ってたことを知ったんだ。」
「・・・」
「俺が前に進もうと思うのは、親父の想いに気づけなかった自分と、あとから知った親父の想いに少しでもこたえたいって思うからだ。」
綾乃はぐるぐる巻きの毛布の中から両手を出して悟の大きな背中に手をまわした。
そんな綾乃をちらりと見た悟はどこまでも優しい顔をして微笑む。
「でも、親父は死んでんだよなー。」
「え?」
「俺は親父への申し訳なさもあってただただ自分に満足できず、ゴールも見えないままがむしゃらに前に進んでた。自分の幸せよりも、親父への後悔から料理人として成長することしか考えられなかったんだ。」
悟はもう一度綾乃を抱きしめなおす。



