運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

「私っていう入れ物に、私は入っていて。」
「うん」
「内側はドロドロしてて、ちゃんとした人間でもなくて」
「うん」
悟は綾乃の体をしっかりと抱きしめながら、ひと言ひと言を大切に相槌を打ちながら聞いてくれている。

その心地よさに、綾乃は心から出てくる言葉をそのまま口にしていく。

「28歳なのに、心はまだまだ幼くて。ヒールのかかと鳴らして仕事をしていても、仕事で成績を収めても、私の中身はただ自分の足元が崩れないかいつもびくびくしている子供みたいで。」
「うん」
「かっこよく挑戦とか、賭けとかできないし・・・」
「うん」
「ただ、自分を守ることに必死で。守れなかったらどうしようって怖くて・・」
「うん」
全然うまく言葉になっていないことを感じながらも綾乃は悟はちゃんと言葉の意味を知ってくれていると安心できる。