運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~

玄関のチャイムに、綾乃は松葉杖をつきながら玄関に向かう。

まさか自分がこんな状況になるとは思っても見なかった。

片耳が聞こえないことは思っていたよりも不自由で、体のバランスがとれず、駅の階段を派手に落ちてしまった。全身を強打していて痛い。ヒビが入ったのは左足で全身のバランスはさらに悪くなった。

松葉杖をついていても、自分の体の平衡を保ちながら前に進むことはかなり難しい。
早く行かないとならないと気持ちは焦るのに、前に進んでいる感覚がない。

連絡の返事がなくて、悟が自分を心配していることはわかっている。
こんな時間まで連絡の返事をしなかった自分を怒ってもいるだろう。

やっと玄関にたどり着いた綾乃がカギを開けると、すぐに扉が開かれた。
「怒ってる」
第一声が”怒ってる”だった悟。
その言葉とは裏腹に、優しく綾乃を抱き寄せる。