「男嫌いなんてもったいないよ」


先輩が力強く何度も言うものだから、そうなのかなって思った。


「そうですね。出来たらいいけど」


「うん、できるできる」


「アハハ、もう軽いなあ」


先輩が明るく笑うのでつられて笑っていたけど、次の彼の言葉で立ち止まってしまった。


「いい人が見つかるといいね」


「えっ……」


彼のTシャツの袖をぎゅっと強く掴んだ。


「愛菜ちゃんにもしそんな人が出来たらお兄さんとしてはちょっと寂しいけど」


お兄さんか……。やっぱりそういう目線なんだろうか。


「その時は教えて」


「……」


なぜだろう、この時の彼の無邪気な表情に少しだけモヤっとした。


どうして、そんなこと言うのかな。


どうして私、ちょっと複雑な気分になってしまうんだろう。


「……」


その後家に着くまでの間、私はどうしてだか先輩の話に生返事しかできなくて、ぼんやりしてしまったんだ。


正体の分からないこの気持ちはいったい何だったんだろう。