気に入ってくれたみたいで素直に嬉しかった。実は彼のためだけに作ったものだった。
「そうですよ、先輩の好みに合わせてつくりましたから」
「俺の好みなんてどうしてわかるの?」
彼は驚いたように目を丸くする。
「そりゃあわかりますよ。毎日先輩のお弁当を詰めていたんだから。それに母との会話からだいたいどんな味が好きなのかメモしておいて覚えましたから」
うちの母は好き勝手に喋っているようでいてちゃんと彼の好む味の傾向を聞き出してたんだよね。
それを奥の厨房でこっそりメモしててそのうちに覚えちゃったんだ。
「え……どうしてそこまで?ていうか、俺と春美さんの会話をそんなに聞いてたの?」
「えっ、あっ、たまたまですよ」
急いでごまかした。毎日しっかり盗み聞きしていたとはさすがに言えない。
「愛菜ちゃん」
目を細めて眩しそうに私を見ているので、ちょっと目線をはずした。



