「愛菜」


「佐倉さん」


うしろから声がしたけれど振り返る余裕が全然ない。


先輩のことが心配でたまらない。


信じようと思ってるけど。
彼のことを誰よりも信じたいけど。

本当はそんなに簡単なことじゃないんだ。


「すみません、通してくださいお願い」


ごめんなさい藍先輩、私のことを信じてって言ったくせに。


雪乃さんと一緒にいるところを見ただけで、不安になってしまったの。


先輩は彼女のことはただの幼なじみだって言ったけど。


私の方こそ。


出来ることなら先輩のことをどこかに閉じ込めて自分だけのものにしたいとさえ思う。


だって。


苦しいくらいにあなたのことが好きだから。