こんな大きな荷物を引いて歩いているからだ。


ゼーハー。


結局10分かかる距離を倍くらいかけてようやく高校の正門前にたどり着いた時には息切れしてしまった。


「ハアハア、先輩着きましたよ」


「うん、ありがと」


腕を離そうとしたら握手のように手を握られた。


彼は満足げに涼しい顔で笑っている。


「愛菜ちゃんて真面目なんだね」


「……」


「最後まで引っ張ってくれるとは思わなかったな」


シレッとしてそんなことを言う。


だって先輩があんまりしつこいから仕方なくやっただけですよ。


「愛菜ちゃんの手って小さくてすべすべしてて柔らかいね」


ヘンタイすれすれの言葉を吐くものだから、急いで手を引っ込めた。


まったくこのイケメンは油断ならない。