「それから、二つ目の命令。」

「まだあるの?」

「結婚する時は、二人であゆの父親にも挨拶に行くから。」

この命令は流石に聞けそうとない。

「父親って・・・。私、会ったこともないのに。」

「どうしても会うのは嫌か?」

「そうじゃないよ。今の生活があるのは父のお陰でもあるし。感謝はしてる。」

これは、私の本音だ。

「じゃあ、挨拶に行かないと。」

「でも、あの人には別の家族がいるでしょ。私は、その邪魔にはなりたくない。」

「あゆの父親は、あゆを邪魔だなんて思ったことは一度もないと思うよ。あゆのことを愛して、心配してる。」

涼介の口振りはまるで話したことがあるみたいだ。

「涼介、まさか、あの人に会ったの?」

「ごめん。勝手な事だとは分かってる。だけど、あゆが会う前に、あゆの父親の気持ちも確かめたかったんだ。」

「それは、私を傷付けないため?」

「それ以外ない。」

涼介は暴走型だけど、全て、私のためなんだと思うと怒る気にもなれないし、幸せだと思う。

ただ違和感があるのも事実で・・・。

「涼介、ありがとう。でもね、ひとつだけ聞いていい?私と涼介は結婚するの?」

「当然だろ。あゆは俺の話を聞いてなかったのか。」

「だって、外堀だけは埋められてる気はするけど・・・。」

涼介は、頭を抱えた。

「あゆ、ごめん。俺っていつも肝心なところが抜けてるな。」

涼介は改まって、真新しいフローリングに正座をすると、私の手を取り目を見つめた。

「歩さん、僕と結婚して下さい。」

「はい、よろしくお願いします。」

私は雰囲気もないプロポーズに涙で返事をした。

「クリスマスに、指輪を買いに行こうな。」

その夜は真新しいベッドで、甘い夜を過ごした。

私は、これからゆふが大好きになる・・・。

終わり