もう3ヶ月も一緒に住んでいたのに、涼介に触れられたのは、この時が初めてだったかもしれない。

「こんな風に慰められたのは、お母さんが生きてた頃以来だよ。何か、涼介の手。安心する。」

涼介はもう一度、頭を撫でてくれた。

「じゃぁ、もっと慰めてやろうか。」

「どうやって?」

私はその意味が分からない訳じゃない。

「冗談だよ。」

私がすぐに拒否すると思っていたんだろう、涼介が焦っている。

「私が慰めてって言ったら、『軽い女』だと思う?」

「俺は高校の時からあゆを『軽い』なんて思ったことはない。」

「じゃあ、慰めて・・・。」

私は自分でも気付かないうちに泣いていた。

「泣くなよ。」

涼介が私を優しく包んでくれた。

「やっぱり、泣いていいよ。俺、見てないから。」

私は、思いっきり泣いた。

たぶん、お母さんが亡くなってから、ずっと溜めていた涙を全部、吐き出すぐらいに。