好きは閉じ込めて【完】

「おれがなんとも思ってないバイトのせんぱいの失恋話わざわざ聞くと思ってる?史華さんは」

「えっ、顎、いたっ」


迅くんは相変わらずわたしの頭に顎を置いている。しかもそのまま喋るからわたしの頭地味に痛いんですけど。

痛いって言ってるけれど、どけてくれる様子はなさそう。


「おれが好きでもない女の人とバイト終わるたびこうやって頻繁に帰ると思ってんの」

「え…」


おかしい。さっきからどうしたの迅くん。

というかやっぱり顎はどけてくれないんだね?


距離は近いし、いい匂いはするし、かっこいいし、って元から迅くんはかっこよかったんだけどなんか今は更にかっこいい。ああ…だめだ、語彙力なくす。


そしてなにより、迅くんがわたしのことを遠回しにすきみたいなこと言ってる気がするんだけど。


好きすぎるあまりわたしがおかしくなってるのかな、これ。



「つめた、」

「っ、なにするの」


やっとわたしの頭から顎をどけた迅くんに不意に両手を掴まれてびくっとなる。



雪だまを作って冷えたわたしの手とは違ってポケットに入れたままの彼の手はすごく温かくて、手を取られたことで出たわたしの声は自分でも驚くほど小さかった。