好きは閉じ込めて【完】

「よかった」

「うん、迅くんのおかげだよ。迅くんのおかげで先輩のこと忘れることできた。迅くんはほんと優しいね」

そう言って微笑むと迅くんも優しく笑った。

「せんぱい」

「…なあに?、ってなんか近くない…?」


あれ、なんかさっきより距離が近くなっている気がする。気のせいかな?

人2人ぶんくらいあったわたしたちの距離が1人ぶんくらいに縮まった気がした。


「うん、おれがせんぱいに近づいてるからね」

「なんで?!」


理解できない、ほんとになんで?

迅くん自ら近づいてくれるなんてどんなご褒美だろうか。でももう少し離れてもらわないと、わたしの心臓がうるさくてどうにかなりそうなんだけど。


そう思って一歩後ろに下がろうとしたのにそれを彼は許してくれなかった。


「うわあ!」


あんなに寒がっていたくせに彼は素早くポケットから手を出して強引にわたしの腕を掴んで引き寄せてきた。

思いのほか強い力に大きく体勢が崩れて迅くんに抱きしめられる形になる。


すぐに離れようとしたのに迅くんは離してくれなくてわたしの頭の上に顎を乗せたりなんかしている。



「え、ちょ、あたまは…———」

「せんぱい逃げるのだめ」

「ひっ」

すぐ上から聞こえてくる甘えたような彼にしては珍しい声に思わず身体が震えた。近いよ、ほんとに近い…!


頭はやめてくれ、バイト終わりだから!!!
臭いかもしれないから!

って言いたかったのにその言葉さえも遮られてしまった。

 
それに逃げるのだめってなんなのさ、逃げさせてくれよ。ずるいよ、だめって。



ああ、もう。ありえない展開に頭のなかごちゃごちゃだ。