クラウディアはひとりごとを呟き、頬を膨らませる。シャンプーもアクセサリーも、多くの絵画教室に通う人たちが褒めてくれた。しかし、クラウディアの心は満たされない。一番に褒めてほしい人に言われない限り、心はずっと青一色だ。

「馬鹿……」

彼のことを想い、クラウディアは頬を赤く染める。そして、逢いたいと何度も思うのだ。

クラウディアが絵に描いたのは、最上創(もがみそう)という日本人男性だ。ヴァイオリン職人としてローマに住んでおり、絵画教室をクラウディアが開いた頃からの付き合いだ。

クラウディアの絵画教室にやってくるのは、当然イタリア人が多い。日本人と関わるなど初めてで、クラウディアはドキドキしながら創に絵の描き方を教えた。

創の絵は最初の頃は何を描いているのかわからないほど下手で、よくクラウディアが創の手を包んで一緒に絵を描いた。そのたびに創は頬を赤く染め、クラウディアは可愛いと思ってしまう。そして、創と関わる時間が増えるたび、これが恋なのだと気付いた。