彼女の目と手は忙しなく動いている。

昔から興味のあることや知りたいことが見つかると、周りの事など気にも止めず調べ続けた。

そして今や研究者として引っ張りだこな彼女。

そんな彼女と久しぶりに会えた。

いや、会いに来た。

彼女は僕のことを気にすることなく没頭している。

そっと彼女の横へ行き、横顔を見てみる。


ワクワクしたような顔

難しそうな顔、真剣な顔

少し前進して嬉しそうな顔


本当に愛らしい。

この子と一生一緒にいたい。

そう思わざるを得ない。

「そろそろ時間ですので…。」

そう後ろから声が聞こえた。

「…はい。」

僕の届かない声を彼女の耳元で囁いた。

「…どこにいても、ずっと君の心にいる。」

「えっ…?」

彼女は僕の方を向いた。

だが目は合わない。

聞こえたことに少し驚いたが、

僕は最後におでこにキスをした。

「…お待たせしてすみませんでした。」

「…いえ。ではこちらへどうぞ。」

僕は自分の胸を強く握った。

そうだ、僕らは大丈夫だ。


君の心には僕が

僕の心には君がいる




_________




あの人が亡くなってから10年が経った。

あの日、あの人の声が聞こえた日から…。

でも私達は大丈夫。


あの人の心には私が

私の心にはあの人がいるもの






end