桜佑はその日から帰って来なかった。
着拒してるから連絡はあったのかも
しれない。

桜祐の、マンションにも帰って
きた様子も無かった。

一月が終わり新学期の、最中
悠里には悩みがドーンと降ってきて
いた。

二月の、修学旅行の、集金だ
15万、小遣いも入れて服を買ったり
下着を買ったり旅行の、準備
も色々ある。

クラスの、子達は皆楽しみで
仕方がない様子だ。

二奈と萌も例外に漏れず
買い物を誘ってくる。

実は担任に行かないと言ってある。
そんな贅沢は出来ないからと
保護者との面談を設定すると言われたが行かないと言い張った。

学校も桜佑と連絡が取れず
渋々了解した。

桜佑はどうやら海外長期出張らしい。

クラスの子達には当日病欠
にしてもらった。

学校側もイジメが、おきない様に
気を使ってくれたようだ。


小学校の、時も中学の、時も
修学旅行には行けなかった。

言えなかった。

「お金出してください」って
なあに又同じじゃん、小学校の、時も耐えて来たし大した事は
ない。
だけど凄く悲しいのはなんでかなぁ。
クラスの、子達が羨まし過ぎて
泣けてくる。



二月半ば桜祐は海外出張から
やっと帰って来た。

偶然桜祐の、母校の、前を通ると
バスが校庭にズラーっと
ならんでいた。


「ああ、修学旅行か‼
懐かしいな!」

そんなノンビリした気持ちで
通り過ぎた。

会社に帰り仕事を片付け、
携帯を見る。

「どうされましたか?」
専務秘書の、田中は(-⊡_⊡)
携帯をイジり回す桜祐に声をかけた。

「繋がらないんだよ
日本を出る時から・・」

長身の、彼田中は前屈みになり
切れ長の目で鋭く携帯を見て

「ハァ着拒されてますね。」


「着拒?」


「なんで?」

(-⊡_⊡)「さあ?嫌われるような
事をされましたか?」


「し、してないと
思うぞ!」

着信を見ると学校から連絡が入って
いた。

会社関係の、携帯は持ち運ぶが
この携帯は急いで日本を出た為
ロッカーにしまったままだった。

「ん?」
桜祐は不審に思い学校に、
連絡をしてみた。



「あ‼ 修学旅費の、事で
担任が何回か連絡したんですが・・」


「はい、振込が無くて
本人は行かないと言い張り
まして・・理由ですか?・・」



「なんで悠里は
行かなかっんですか?」


「大変言いにくいのですが
・・旅費が難しいからと・・」

「専務、専務
どうされましたか?」

デスクの、上に項垂れた俺を
田中は心配していた
然し俺は・・
立ち直れ無いほど悔やんでいた。

スーパーの、バイトを週3にさせて
勉強するようにした。
この間婆さんに聞いた
光熱費、も自分で
払わせてくれといい、自分で
払っていたらしく
婆さんの、お年玉も返却に来たと言う。

俺のお年玉も返されていた。
桜哉との会話が頭を過ぎった。


着拒は俺が金を出さなかったせいか?

「お年玉だって、あんなに
喜んでいたのに?
なんで返したんだ?」

”「何でだ?
16の、娘がなに考えてるんだ‼」



「おっ、桜祐、悠里と
上手くやってるか?」


「桜哉兄さん彼女は、まだ未成年だ‼
妹みたいなもんだ、可愛いよ。
正月なんか本家で裏方
頑張ってくれてサ

それにお年玉なんて
可愛い事言うんだよ。」



「へえ~久しぶりに聞いたな
お年玉なんて」


「そうそう、いくらあげて
良いか分からないからトリマ
10万あげたよ。
許婚だからな、何年かしたら
俺が悠里にお年玉ねだらなきゃ
いけないかもだからな、
アハハハ」


「そうだな!
家計は、女房が切り盛りするからな
俺は嫌だけど・・な‼」

なんて会話がよみがえる。
俺も嬉しかったんだ
悠里が俺を許婚と認めたようで・・


ハァせめて朝知っていたら旅行に
間にあったものを・・

(-⊡_⊡)
「専務、手配しましょうか?」
デキる秘書の田中の言葉に
パッと顔を上げた。

「- ̗̀ 💡 ̖́-できるか?」

「お任せください
学校と連絡を取って
コースを確かめます。」


「あ、ありがとう。
頼んだぞ!」


「お任せください。」

田中の一言に安心する。
俺は仕事を早めに切り上げ悠里のマンションへと帰る。

静まり帰った部屋は暖房も使わず
ひんやりとしていた。

カチャリ

寝室のドアを開けるとベッドの上に
体育座りをした悠里がいた。


「悠里学校は?」
未だ3時だ、知っていながら・・


「お帰り
休んだ、体調悪くて‼」

俺も悠里のベッドの横に座り
項垂れていた。


「お帰り、どうしたの?」
気落ちしている俺を悠里は元気ない
顔で見てきた!

「なんで話さない!」
声のトーンが勝手に下がる

「え?(笑)」
何を・・!」
笑いで誤魔化し桜祐を見る


「修学旅行‼
お金がいるんだろ
先生に聞いたら半年前から
積み立てか一括かの話は
あってたらしいじゃないか‼」


「良いよ!
その話は終わり‼
桜祐には関係ないじゃん。
私達なんでも無いし

それに桜祐言ってたじゃん

”俺を頼るなよ”って
それを思い出したの」


「・・それは、会った日の話で
今は違うだろ!
一緒に住んでるし」


「それにお年玉迄なんで
返すんだ、婆さんにまで‼」


「貰う言われが無いからだよ。」

桜佑はベッドに座り混んだまま
悠里を振り返った。

「桜哉さんに言ってたでしょ
お年玉ねだられたって‼
本当は迷惑だったんじゃん。」


「迷惑?」


「それに私気付いたの
育ての親と同じだって
似てるって‼

桜佑にお年玉ねだった。
10万なんてホント嬉しかった
お金を見て嬉しかった、そして
桜哉さんに会った時

もしかしたらお年玉くれる
んじゃないかと期待した。

桜哉さんは5万出しながら
すくないか?
って聞いてきたの

桜佑にくらべたらすくないなって

思っちゃった。

その時ビックリした
私は母親に似てるって
1000円で1ヶ月食うや食わずの
生活をしていたのに
5万が少ないって・・」



「・・」




「桜祐に甘えっ放し‼」


「たとへ、お前が我儘言おうと
俺は応えるぞ悠里、俺はお前を!
許嫁と思ってる。

許嫁の面倒を見るのは
行けない事か
着拒もそのせいか?」

体育座りをしながら頭を両足に
挟み悠里は泣いていたのかもしれない。

俺は立ち上がり
「行くぞ」
そう言って悠里を見た。



「もう、今日だったの出発
間にあわないよ、皆もうスキー
してる。」

「先ずは持って行く物
買わないと、明日朝イチで
合流だ‼

北海道は寒いぞ!」


悠里はベッドの上で首を振った。

「桜祐、嬉しいけど・・
お金が、無い‼
光熱費、と桜祐にお金返したら
今月食べて行けないし
参考書も買わないと

2年生になるから教材費だって
ノートだって買わなきゃだし
それに大学に行くお金だって
貯めないと
だから旅行なんて贅沢出来ないから‼
行かないんじゃなくて
行けないの!三上の家はもう
一円も出してくれないし
自分で都合しないと‼

だから・・
そっとしておいて欲しいの‼

気持ちありがたいけど、桜祐からも
借りない、借金増えるし
無理‼払えない。」


「・・・悠里、俺を馬鹿にしてる?
そんな甲斐性無しか?」



「お前のバイトには目を瞑って来た
本当は行かせたくない!
光熱費も俺が払う加納家に
払わせたくないなら早く言って
欲しかった。


大学費用?
そんな心配する方が可笑しいだろ‼
俺を頼れば良いんだ‼

曾祖父さんが見つけて来た
許婚何だから、威張ってていいんだぞ
誰から何言われても気にするな!」


「・・・さぁ‼
分かったら行くぞ!
着替えて来るから
悠里も着替えておけよ。」

そう言って出ていった。


桜祐はスーツを脱いで黒のニット
のセーターとジーンズ

上にグレーのチェスカコートを羽織
又悠里のマンションへと向かう。

「準備できたか?」
ドアを開けるとクルクル巻いた
背中迄の黒い髪

白いフリフリのブラウスに
網目の荒い茶系の
モッコリとしたカーディガン
短い膝上のスカート

モッチりとしたほっぺたに丸い目は
ホントに陽斗が言っていたように
あどけなく
お人形さんの様にかわいらしい。


一瞬固まってしまう。

「悠里が大人になったら・・・」
虫がワンサカ付くな!
と父親のような感情も湧いてくる。