「僕の今世の名前はメルキュール。聞き覚えないよね?でも、前世の名前は藤村零。久しぶり、修也」

「えっ?」

この目の前にいるのが零?僕の知っている零とは違う見た目だ。どういうことだ?前世ってことは、零は死んだってこと?

「信じられないかもしれないけど、君はもう修也じゃないんだ。太宰修也は死んだ。君は今、魔法使いとして異世界でノワールという名前で小説家をしている」

「何それ……」

零はこんなこと言わないはず。何のドッキリなの?でも、頭の中にぼんやりと温かい何かが波のように押し寄せて引いていく。一体何なんだ?

「ノワールは異世界で多くの人から必要とされてる。大切に両親から育てられて、友達がいて、好きな人がいて、小説家として応援してくれるたくさんのファンがいるんだ。とても温かい人生なんだよ」

「……何言ってるのさ、さっきから」

僕の中に苛立ちが生まれていくのがわかる。必要とされる?愛される?仮に修也が死んでノワールだとしても、そんな人生ありえない!