「あら、あなたはどちら様?」

 えっ……⁉
 オレは突然のことで驚き過ぎて声が出なかった。

 なぜなら、そこに立っていたのは、見たことのないおばあさんだったから。
 そして、いきなり「あなたはどちら様?」と言われてしまったから、オレは何が何だかわからなくてプチパニック状態になってしまった。

 そんなオレの状態に気付いていないのか、おばあさんはさらに言葉を続ける。

「ここは林マンションの503号室ですよね?」

 そう訊ねてきた。

 林マンション……。
 林マンションは、オレが住んでいるマンションの隣のマンション。

 おばあさんは、林マンションがここだと思っているのか。
 そう思ったオレは、

「いえ、ここは森マンションの503号室です」

 オレはそう答えた。