「それは良かったです。ありがとうございます。では、私達は失礼します。どうぞごゆっくりなさって下さい」


前田さん達は社長室を出ていった。


「じゃあ、私も…」


「まだたくさん残ってる」


榊社長は、私のミルクティーを覗き込んだ。


「でも、社長さんの食事の邪魔をしたらダメなので…」


「その『社長さん』っていうの、やめてくれないか」


「えっ…」


榊社長を他になんて呼べばいいの?


「俺の名前は、榊 祐誠。だから祐誠(ゆうせい)でいい」


「そ、そんな! それは無理です」


私は、頭をブンブン横に振った。


「何が無理? 『社長』なんて…そんな呼ばれ方、会社だけで十分だ。雫には肩書きじゃなく名前で呼んでもらいたい」


榊社長は立派でふかふかのソファに座って、対面にいる私を真剣な目で見つめた。


そういえば私、希良君を名前で呼ぶことにあまり抵抗を感じなかったのに…


今、目の前にいる榊社長に対しては…なぜかすごく緊張してしまってる。