「雫さん。あれ、乗りましょうよ」


希良君が指差した先にあるのは、後ろ向きに走るジェットコースター。


耳元についたステレオから流れる曲が気持ちよく、走る時の爽快感は半端ない。


でも、実は…ちょっと苦手だったりする。


「う、うん」


「怖い?」


「少し…ね」


「じゃあ、止めよう。他のにしよ」


希良君は…本当に優しいんだね。


嫌な顔ひとつしない。


「ううん、大丈夫だよ。前に1度乗ってるし、怖いけどまた乗りたいから」


それは本当。


あのスリルはクセになる。


「本当に大丈夫?」


「大丈夫」


「よし、じゃあ、乗ろう。手を握ってれば安心でしょ?」


「あっ、うん」


手を握るって…


恋人同士みたいだよ。


とにかく、私達は列に並んだ。


平日だけど、春休みと重なったせいでかなり混んでる。


それでも、その待ち時間の間に希良君といろんな話ができた。