「前田君。気をつけてね」


「行ってきます。今日、沙羅は?」


「今日は友達とカラオケだって。ちょっと遅くなるみたいよ」


「そんな…まだ高校2年生なのにカラオケなんて」


「あなたは真面目過ぎるのよ。カラオケなんて今どき普通でしょ? それに沙羅はあなたに似てしっかりしてるから大丈夫よ」


僕の妻は、京都の実家近くに住んでいた幼なじみ。


どちらかといえば、沙羅は君に似てしっかり者なんだと思うけど。


『前田君のこと…ずっと好きだった』


百貨店でのパンのイベントの時、僕は…君に突然告白された。


榊社長のためにと、脇目も振らず必死で頑張ってた頃だったから、いろいろ不安だった。


でも、社長に相談したら、


『好きな人の側にいなさい』って…


そうやってアドバイスしてくれ、僕の心がずいぶん軽くなったのを覚えてる。


その言葉、今でも忘れていない。


大切な家族と過ごす時間…


それをくれたのは榊社長だと思ってる。