周りの目を気にすることもなく、手を繋いだまま亜美は図書館を出た。


「希良君。図書館の裏って…ちょっとドキドキしない?」


こんなとこで何を言うつもりだ。


「そっか? 別にしないけど」


友達に対して素っ気ない態度だとはわかってた。


だけど…


東英大1番人気の亜美が目の前にいても…


僕は、ドキドキなんてしなかった。


「希良君、いい加減に素直にならない?」


素直?


「最近暗いよ。大学生なんだから、もっと…恋とかして青春しない?」


「ほっといてほしいんだけど」


本当に…それが素直な気持ちだった。


「そんな言い方しないで。希良君はいつだって元気が取り柄なのに…そんな暗いの、なんか嫌だよ」


「青春なんか…関係ないから」


そう、僕には『青春』なんかない。


雫さんとドキドキした恋愛は、もう出来ないんだから。


どんなに思ったって、あの人とは一緒にいられないんだ。